吉野の山間僻地の人が食べる柿の葉鮨というものの製法。
米一升に付酒一合の割りで飯を焚く。酒は釜が吹いて来た時に入れる。さて飯がムレたら完全に冷えるまでさました後に手に塩を付けて固く握る。この際手に少しでも水気があってはいけない。塩ばかりで握るのが秘訣だ。それから別に鮭のアラマキを薄く切り、それを飯の上に載せて、その上から下記の葉の表を内側にして包む。柿の葉も鮭もあらかじめ乾いたふきんで十分に水気を拭き取っておく。それが出来たら、寿司桶でも飯石でもいい、中をカラカラに乾かしておいて、小口から隙間のないように鮨を詰め、押し蓋を置いて漬物石ぐらいな重石を載せる。今夜付けたら翌朝あたりから食べることが出来、その日一日が最も美味で、二三日は食べられる。
— 『陰翳礼讃』谷崎潤一郎